今から約5年前、国は
「2020年を目標に会社でうつ病等の様々な精神疾患のケアやメンタルヘルス対策を受けられる割合を100%にする」
という指針を発表しました。今のところは指針(そういう方向へ進んでいる)という段階ですが、これまでに国は
- 心の健康問題で休業した労働者が職場復帰するにあたっての手引きの修正・追加
- 労働者の心の健康を保ち、維持する為の指針を策定
- 精神障害での労災認定の基準を新しくする
といったのを行っています。この辺りはまだ余り知られていないのですが、
『会社でのうつ病等の心の病についてのメンタルヘルスケア及びリワーク(復職)支援』
というのは義務化に進んでいるようです。こうした政策が果たして2020年となる5年後に整備が終わるかは分かりませんが、10年後には恐らく義務化となっているでしょう。5年後、10年後と聞くと「まだ先」と感じるかもしれませんが、意外とアッという間です。
義務化になってから
「よし、対策しよう!」
となっても、社内環境や就業規則を変えるというのは思ったよりも時間がかかります。ですから、今から準備をして義務化した時に「ウチは大丈夫!準備万端!」となるようにしていきませんか?
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目次
- どうして、会社でメンタルヘルスケアをする必要があるの?
- 実はすでに法律はあるけど。。。
- 精神疾患等による労災申請や訴えはますます今後増える可能性
- 義務化になると、まず必要となってくる『メンタルヘルスケア対策チーム』
- 義務化しておく前にやっておきたい『就業規則の見直し』
1.どうして、会社でメンタルヘルスケアをする必要があるの?
現在うつ病を患っている人の数は約300~400万人といわれています。この内、うつ病で会社を休んでいる「うつ病休職者数」は、約80~100万人。患者数から見ると休職者の割合は約3分の1~4分の1といった感じです。
この患者数と休職者数はこの2,3年でも格段に増え、今後も増加の一途を辿る傾向が出ています。最初にお話した国の「2020年を目標に~」という指針は、このようなうつ病患者や休職者が減少する為に作られたものです。
うつ病になる原因は人それぞれですから、
「うつ病って、なったその人の問題じゃないの?」
と思うかもしれませんが、もしもうつ病になった理由が
- セクハラ
- パワハラ
- マタハラ
という会社で受けた事が原因なら、それはその人の問題というよりも
『会社にも原因・責任がある』
と考えてもいいのではないでしょうか?そしてこう考えると
「うつ病は、その人の問題」
とは言えませんし、会社でのなぜケアが必要なのか?というのも答えが見えてくるのではないかと思います。
2.実はすでに法律はあるけど。。。
皆さん、
「労働安全衛生法」
という法律をご存知でしょうか?読んで字の如く、働いている労働者の安全と衛生を守る為のものですが、この中にうつ病やメンタルヘルスケアについて
- 労災防止の為の最適基準の守り、労働者の安全と健康を確保する
- 安全衛生の水準向上の為、快適な職場環境を作るよう努力する
- 労働者の生命等の安全確保をしつつ、必要な配慮を行う
といった法律があります。(上記は一部抜粋かつ分かりやすいように簡略化しています。)
そう。実は既にうつ病やメンタルヘルスケアについての法律というのは存在しているのです。しかし、
- 不景気によるリストラでの人員削減で、残ったメンバーは仕事量・残業の増加
- ブラック企業と呼ばれる企業での労働安全衛生および労働基準法無視の勤務形態
- 職場環境の不全、不備 といったのが数多く存在していて、上記の法律が機能しているとは言い難いです。そして家族経営や少人数の中小企業の場合だと
「皆元気だし、うつ病なんかならないよ。だから最低限で問題ない」
「我が社は社と言っても従業員は家族だけだから、大丈夫でしょう」
という意識が少なからずあるので、
『法律は知っているけど、本格的には取り組んでない。(取り組めていない)』
という現状になっているのです。
3.精神疾患等による労災申請や訴えは今後ますます増える可能性
恐らくですが、うつ病が私達の間に知られるようになった最初の頃は
「なったその人に原因がある」
という考え方が殆どでした。
例えそれが会社に原因があったとして訴えを起こすというのは稀なケースでしたし、どちらかといえば泣き寝入りの方向が強かったでしょう。
しかし現在では、
- 長時間勤務
- セクハラ、パワハラ等のハラスメント
といった
『会社の責任による、うつ病の発症』
というのが広く知られるようになりましたし、実際に労災申請や「うつ病発症に至ったのは会社に責任がある」と訴えを起こす人も少しずつ増えてきています。
こういった状況から私達の間では余り知られてはいないのですが、
『心理的な事が原因での精神障害の認定』
に新しい基準が設けられました。これによって、これからは今よりも更に
「会社がメンタルヘルスケアを怠ったから、うつ病になった」
「うつ病から復職したのに、きちんとした対応をしてもらえなかった」
という訴えが増えてくるのが予想されます。
そうなった時に、もしうつ病やメンタルヘルスに対するケアが義務化されていたら、法律違反になりかねません。そうなると訴えられただけでなく、周囲からの視線も相当厳しくなるでしょう。
4.義務化になると、まず必要となってくる『メンタルヘルスケア対策チーム』
目次1~3までは
- 会社でメンタルヘルスケアを行わければならない必要性
- 法律はあるけど、現状では効果が薄いという点
- 今後増えてくる、うつ病等の精神疾患が原因の労災申請や訴え
についてをお話してきましたが、ここからは会社でのメンタルヘルスケアが今後義務化された時に、まず必要となる
『メンタルヘルスケア対策チーム』
です。
始めにメンタルヘルスケア対策チームでは、
① 従業員のメンタルヘルスケアチェック
② 従業員へのメンタルヘルスについての講習会や研修
③ うつ病またはうつ病予備軍の従業員のケアや相談窓口
④ うつ病で休職した従業員が復職する時のリワーク(復職)プラン作成
⑤ うつ病休職者がリワークした時のフォローやリワークプランのチェック
等を行っていきます。
①では皆さん会社で1年に1回健康診断をしていると思いますが、これと同じように従業員のメンタルヘルスケアチェックを定期的に実施して、
- 従業員が心理的ストレスを抱えていないか?
- うつ病やうつ病予備軍となっている従業員がいないか?
というのを確認していき、もしそんな従業員がいれば専門医療機関の受診を促して早期治療と早期回復を図ります。
②の講習会や研修は、うつ病が私達の間でも割とポピュラーと言える病になってきましたが、まだまだ偏見や差別されやすい病ですし、TV・新聞・書籍といったので情報は得られますが
- 正しいうつ病の知識を『従業員全員が共通する』
というのは難しいです。
そこで、正しいうつ病の知識を得る為の講習会や研修を会社を挙げて行って、従業員全員が共通出来るようにします。こうする事で普段の仕事の中でのうつ病を予防出来たり、うつ病休職者がリワークしてきた時のトラブルを減らしたり、職場でのサポートがしやすくなります。
③の相談窓口は例えば
「ちょっと最近残業が多くて、眠れなくて業務に集中できない。」
「○○課長からパワハラを受けていて、会社に出勤するのが苦痛です。どうしたらいいですか?」
といった従業員からの訴えに、会社として出来る限りの最善を尽くして対応するのが主な役割です。
「そんな事で?」と思うかもしれませんが、上の2つの訴えはどちらも会社が原因によるメンタルヘルスの不調を取れます。ここで「うつ病か?否か?」というのが判断できなくても、その可能性は大いにありますから、ここで問題をクリアにしておかないと間違いなく「うつ病発症」に繋がっていきます。
例え、一従業員がうつ病になったとしても休職・退職すればその人の受け持っていた仕事は他の人が行うのですから業務量が増えます。業務量が増えれば残業も増えるでしょう。そうなると今度は別の人が、うつ病になっていく可能性が出てきます。
この悪の連鎖反応を断ち切る為にも、この相談窓口はとても重要で「そんな事で」では済まされないのです。
④と⑤は「うつ病休職者が復職」した時についてのものですが、現在うつ病休職者が1年以上復職出来ている確率というのは、一ケタ台のパーセンテージといわれています。
それだけ低いのは、休職者本人の回復時の状態や復職する際の準備不足というのもありますが、やはり会社での
『リワークプランの作成・チェックとうつ病休職者のフォロー不足』
が指摘されています。
そこでメンタルヘルスケア対策チームが出来たら、その中でここを管轄する「リワークプランチーム」を作っておくと、リワークプランの作成やうつ病休職者のフォローがしやすくなる効果があります。そして、うつ病休職者が復職する時は、必ずこのリワークプランチームの人が面談をして
- 勤務日数や時間
- 仕事内容
- リワーク先
といったのを綿密に決めていきましょう。このリワークプラン、うつ病休職者が居ないと必要はありませんが、実際に1から作るとなると情報がないと慣れない分かなり難しいでしょうから、あらかじめ書籍やネットでリワークプランの情報や実際のモデルケースを探して参考にしておくと便利だと思います。
5.義務化しておく前にやっておきたい『就業規則の見直し』
大企業でも中小企業でも会社というのであれば
「就業規則」
というのがあります。就業規則には
- 勤務時間や日数
- 昇給
- 有給休暇とその取得について
- 就業規則違反となる事
についてといったのが細かく載っています。しかし
『うつ病等の精神疾患やメンタルヘルスケアについて』
というのが就業規則にある会社は現在まだとても少ないです。今後、会社におけるメンタルヘルスケア対策が義務化されれば、それに合わせて就業規則についても見直しが迫られる事になりますが、就業規則を変更するというのは意外と時間がかかる作業です。
「準備万端!」とする為にはこの就業規則の見直しから始めれば、義務化した後に慌てる事もありませんし、
「会社の就業規則で決められていますし、従業員の安全を守る為に専門の医療機関を受診してください。」
とスムーズに行動出来ます。
ただ「今ある就業規則をいじるのは。。。」というのであれば、通常の就業規則とは別に
『うつ病やメンタルヘルスケアについての就業規則』
と、新たに作ってしまうというのも一つの方法ではないかと思います。
「会社のメンタルヘルスケア対策の義務化に向けて、何をすればいいのか?」
と悩んだら、一度じっくり就業規則に目を通してみましょう。もしかしたらそこに貴方の会社で行うべきメンタルヘルスケア対策のヒントが隠されているかもしれませんよ。
まとめ
これはうつ病とはちょっと違うのですが、うつ病かつ会社が原因といえるものの1つの「マタハラ」による訴訟というのが、最近ニュースで報道されていました。
この訴訟はマタハラによるものなので、訴状を起こした人がうつ病になってしまったかというのまでは分からないのですが、恐らく近い状況にはなっていたのではないかと思います。
ちょうどこの記事を書くにあたって、色々と調べていた時期だったのでこのマタハラについての訴訟を知った時に
「あ、実際にこうした内容での訴訟って増えているんだな」
と実感しました。
そして
「という事は、やっぱり会社でのメンタルヘルスケア対策は義務化になるんだろうな」
とも思いました。義務化という言葉だと「やらなくては」もしくは「やらされている」という感じが、どうしてもしてしまいます。それなら出来る部分は先に済ませておけば義務化した時に慌てずに済みますし、今の時点で修正しておいた点が見つかれば、もっと充実したメンタルヘルスケア対策が整備されるでしょう。
今は「まだ大丈夫」と思っていて、5年後・10年後「マズイ!」と慌てるより「準備万端!」と言える方が安心だと思いませんか?
最初に書きましたが、最後にもう一度
5年後、10年後って、意外とアッという間ですよ。
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