うつ病になって休職していた社員が職場復帰するのを『リワーク』といいます。通常の病気による入院治療後や出産後のリワークにも大変な部分はありますが、うつ病による休職後のリワークは
- うつ病の症状は一進一退(今日は良くても、明日は悪い)
- 復職後の職場でリワークが実は上手くいっていない
という点から最初の2ヶ月くらいだとリワーク出来ている割合は8割と高いのですが、1年以上となると2割とかなり落ち込みます。だから、
『うつ病からのリワークは難しい』
といわれています。うつ病からのリワークで最も大切となってくるのは
- うつ病休職者のリワーク先
- リワーク後の仕事内容・アフターフォロー・症状チェック等の見極め
です。また復職後のリワークが実は上手くいっていない原因に
『うつ病休職者のリワークを妨げている壁』
があります。うつ病患者の数というのは現在300万人とも、400万人ともいわれています。これだけ多いと、もしかしたら皆さんがお勤めの会社にも、
①うつ病を患っている方
②うつ病治療の為に休職中の方
③まだうつ病と分かっていないけど、うつ病な方
がいらっしゃるのではないでしょうか?①と②の方がいるのであれば、将来的に『リワーク』へとなるでしょうから、その時に
「リワークの連絡あったけど、何をしたら良いんだろう?」
「リワーク後の仕事や勤務日数とか、どうしたら良いんだろう?」
「うつ病休職者がリワークしたら、気をつけた方が良い事は?フォローは?」
といった問題に直面しますから、こういった問題の解決とまではいかなくても「予備知識」としてこれから
『うつ病休職者のリワークについての見極めポイント』
『うつ病休職者のリワークを妨げる壁』
について、お話していきます。特に見極めポイントについては、実際「うつ病休職者がリワークする職場」にスポットを当てていこうと思います。
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目次
- 最初の見極めポイントは「うつ病休職者のリワーク先をどこにするか?」
- リワーク者の体力や作業力が復職に対応出来るまでに回復しているか?
- 意外と見極めポイント度が高い「リワーク開始日」
- うつ病からのリワークを妨げてしまう『5つの壁』
1.最初の見極めポイントは「うつ病休職者のリワーク先をどこにするか?」
まず最初の見極めポイントは、当然ですが
『うつ病休職者のリワーク先をどこにするか?』
です。ここでの選択を誤ってしまうと今後のリワークが上手くいかない可能性大です。まず注目しないといけないのは
「リワーク者の休職前の職場」
です。もしリワーク者の休職前の職場がストレス負荷が高いクレーム対応や残業が多くなりがちな職場だったら、リワーク出来るまでに回復した休職者のうつ病が再発・悪化してしまう危険性があります。
だからもしそういった職場であったうつ病休職者の場合は他の職場でのリワークを考えて下さい。この時、
- 人事や労務のスタッフの目が届きやすい
- リワーク者が直ぐに相談しやすい
というメリットがあるので始めの慣らし出勤の間は人事や労務かその近くの職場でリワークをスタートさせるとお互い連絡や相談といったのもしやすいので良いのではないかなと思います。
2.リワーク者の体力や作業力が復職に対応出来るまでに回復しているか?
次のポイントは「リワーク者の体力や作業力が復職に対応出来るまでに回復しているか?」です。うつ病を患っている人の中には、
- 昼夜逆転の生活
- 作業力や集中力の低下
といった症状があり中には引き籠りの生活となっている人がいて、こういった人がリワークをスタートさせると休職中とは全く違う生活スタイルとなるので、これもうつ病の悪化を招く原因となります。ここでの見極めポイントは
①毎日きちんと決まった時間に起床、就寝出来ているか?
②通勤時に交通公共機関を問題なく利用したり、車の運転に問題がないか?
③通勤~慣らし、リハビリ出勤~帰宅まで体力や気力が保てるか?
です。
①は昼夜逆転の生活のまま、いきなり慣らし・リハビリ出勤になると心身ともに疲労やストレスを強く感じてしまいます。だから、まずは決まった時間に起床や就寝をして
「会社に行く生活リズムが出来ている」
というのがリワーク可能かどうかの1つの目安にもなります。
②の公共交通機関や車の利用ですが、これも休職中は遠ざかっていた人が多いのでいざリワーク開始となった時に
「電車内でパニックになって、会社へ行けなかった」
というケースが結構多くあります。この点を考慮するなら例えば出勤時間を朝のラッシュを過ぎた時間にして、帰りも出来るだけ人が多くない夕方早目の時間に定めましょう。
会社に調整出勤が出来る「フレックスタイム」があると、うつ病休職者のこういう出勤をしやすく出来るので、もしフレックスタイムがないという場合は、この際に導入を検討してみてもいいかもしれません。
③の通勤~リワーク~帰宅までの体力や気力を保てるかは、実際リワークするにおいてここが恐らく一番の見極めポイントなるでしょう。ここで
「大体どのくらいの時間、気力や体力が保てば問題ないのか?」
という話になりますが、まず通勤時間が往復1時間として最初の慣らし出勤を2時間行うというのであれば、合計3時間が目安となります。長距離通勤をしている方だと通勤時間が長くなりますから、その分この目安時間は長くなります。
ここでもしも休職者本人と面談して
「うつ病休職者からリワークの連絡があったけど、まだそれほど回復してない」
と感じたら、
- まずは会社に通勤だけしてもらって、通勤と出社になれてもらう
- 医療機関や精神保健福祉センター等で行われている「リワークプログラム」を受けてもらう
といった対策を視野に入れてください。
ここで「リワークプログラム」というのはうつ病で休職中の患者さん向けに、
- うつ病についての正しい知識
- グループワーク等で周りとのコミュニケーションの取り方
- 上手なストレスの受け止め方と逃がし方
- パソコン入力といった軽作業で作業力や集中力のアップ
といったのを行うので、一度これを受けてもらうのを提案しても良いでしょう。その時、
「このリワークプログラムを受けてもらった方が、会社としても○○さんのリワークをサポートしやすくりますし、○○さんにも出来るだけうつ病の再発や悪化をせずにリワークして欲しいので、考えてみてもらえませんか?。」
と説明したらただ「受けて下さい。」と言うよりも、うつ病休職者もリワークプログラムへの参加を考えやすくなると思います。
3.意外と見極めポイント度が高い「リワーク開始日」
うつ病休職者のリワークでスポットを当てられるのは
- リワーク先
- 勤務時間や日数
- リワーク時の仕事内容
といったのですが、
『リワーク開始日』
というのも、うつ病休職者のリワークを長く続けるには「気をつけないといけない」点といえます。
私達の感覚としては会社へ復職というと、キリの良さや週の始めというのがあって「月曜日から」としたい処ですが、うつ病休職者にとっては
「明日から、リワークだ。大丈夫かな?。。。」
「今まで休職していたから、明日からのリワーク頑張らないと」
と不安や焦り等を感じやすくなってしまい月曜日
- 不安で家から出れない
- バスや電車に乗れなくて仕事に行けなかった
なる可能性があります。だからといって週の前半~水曜日あたりだと土日の休みまでが長いです。じゃあ、いつにするか?というと一番良いのは
『リワーク開始日を休みの前の日』
です。例を挙げるなら金曜日、祝日、お盆や年末年始の休み前日等です。
「え?!そんなのリワーク始めて直ぐに休みなるのでは。。。」
と思うかもしれませんが、月曜日や休みまで間がある日にリワークの開始日を設定すると、リワークへの不安や実際に行ってみての疲労感やストレスが休日までにずっと蓄積されてしまい、これはうつ病再発や悪化の引き金となります。
反対に休みの前の日をリワーク開始日にすると、こうした不安感、疲労感、ストレスといったのは休みの間に和らげられるので、
『リワークを継続していける』
効果が大きいです。
「そんな事まで、うつ病からのリワークって気をつけないといけないの?」
と思うかもしれませんが、このうつ病休職者のリワーク開始日ちょっとしたポイントですが、ここで見極めを間違ったりすれば後々のリワーク成功率や持続性は低くなるでしょうから、実は「意外と見極めポイント度が高い」といえます。
4.うつ病からのリワークを妨げてしまう『5つの壁』
うつ病休職者から復職の連絡があり、主治医からの診断書をチェックし、休職者と面談しよく話し合ってリワークプログラムを作り「準備OK」でリワークが始まったにも関わらず、リワーク者のうつ病が悪化して再度休職してしまうというのには、
『うつ病からのリワークを妨げてしまう5つの壁』
に気づけなかったという場合があります。この5つの壁というのは
①浦島太郎の壁
②予期不安の壁
③働き甲斐の壁
④通勤の壁
⑤話し合い不足の壁
です。ここに挙げた5つの壁は
- うつ病休職者と会社側がしっかり話し合う
- 「これで大丈夫!」と思えるリワークプログラム
といったのを行っても、実際にリワークが始まってみないと見えないものです。だからリワーク後にうつ病が再発、悪化すると
「どうしてなんだろう?」
と、どちらも思い悩んでしまうのです。ではこれから、この5つの壁を1つずつ順を追って説明していきます。
うつ病からのリワークを妨げてしまう5つの壁:その1.浦島太郎の壁
会社をしばらく休んでリワークすると、
- 職場の上司や仲間が異動で変わっていた
- パソコンやコピー機等が休職前と変わっていた
という事があります。普通の人の場合なら「あ、変わったんだな」と思うくらいですが、うつ病リワーク者の場合は
「休職前のソフトと違うからパソコンが使えない。そうしたらリワーク出来ない。皆に迷惑をかけてしまう」 「社名が休職中に変わってしまったけど、きちんと電話対応できるだろうか。。。」
といった不安を感じてしまいます。うつ病休職者の場合は「あ、変わったんだな。慣れていこう」と思うよりも、こうした不安や焦りが先に大きくなってしまうので、そうなると仕事をする前からストレスや負担を抱えている状況となってしまいます。そこで、もしもこういった事があった場合は、
「○○さんが休職中にデータ入力のソフトが変わったので、まず仕事をする前に練習してみてソフトに慣れるのから始めてみましょう。このマニュアルを渡しますが、分からなければ遠慮なく聞いてくださいね。」
と伝えたり、
「○○さんは休職前と違う部署でのリワークになるので、電話応対は緊張するかもしれませんね。少し電話応対の仕方を私が相手になりますからロールプレイングしてみましょうか?。」
と声をかけて、出来るだけリワーク者の不安や焦りが取れるようにして下さい。
うつ病からのリワークを妨げてしまう5つの壁:その2.予期不安の壁
うつ病休職者の殆どが1度はぶつかるであろうというのが、この予期不安の壁です。これは
「多分、リワークしても上手く出来ないんだろうな。。。」
「もしリワーク失敗したら、会社に居場所が無くなったり、クビになるのでは。。。」
というのを予想をして、これが実際にリワークした際に本当に失敗してしまう原因になったり、後でお話する通勤の壁と合わさって、会社に出勤する事自体が出来なくなる可能性も出てきます。
こんな場合は
- 産業医がいる会社であればリワーク中に産業医に相談にのってもらう
- うつ病の症状やリワーク態度によっては、一度中断して主治医のカウンセリングを受けてもらう
といった方法でリワーク者の不安を解消できるように、また再発をチェック出来るようにしておくと万が一の時に直ぐに対応が出来ます。
この予期不安の壁を越える、または低くする方法にはもう一つ、
「医療機関等のリワークプログラム」
を受けていると、ストレスや不安の受け止め方やそれを上手に解消する方法を学べたり、同じうつ病休職者によるグループセッションで悩みや不安を話せるので、「失敗したら。。。」という焦りや不安を小さくする効果があります。
このリワークプログラムには会社でのリワークを成功させる効果も高いので、
「うつ病休職者が少しでもリワーク出来るように」
というのを考えて社内リワークと合わせて参加してもらうのを考えるのも良い方法だといえます。
うつ病からのリワークを妨げてしまう5つの壁:その3.働き甲斐の壁
「自分が早く職場に戻らないと、仕事が滞ってしまう」
「仕事をしないと、早く会社に復帰しないと」
といった焦りから出来る働き甲斐の壁。本当はまだリワーク出来る状態ではないのに、この焦りがうつ病休職者の心から離れなくなってしまうと、
「自分はもう治っています!職場に復帰したいのでリワークOKの診断書を書いて下さい。」
と主治医に強く申し出たりします。しかしこの「治ってる」は本当にうつ病が治っているのではなく、休職者の思い込みによるものなので、本当は治ってはいません。だからリワークしても直ぐに
「なんで、出来ないんだ!」
「職場に迷惑をかけてしまった」
と思い、「仕事が出来た!」という達成感を感じられずに落ち込み、しばらくするとうつ病が悪化そして再休職というパターンに陥ってしまいます。
この働き甲斐の壁にぶつかっていると、会社の方にも「リワーク出来るようになったから、仕事をさせて下さい」という連絡がありますが、診断書の「復職OK」だけでなく休職者本人との面談やリハビリ出勤の様子をよく注意する必要があります。
うつ病からのリワークを妨げてしまう5つの壁:その4.通勤の壁
会社と自宅が近い人だとこの通勤の壁は低めですが、バスや電車といった公共交通機関を使ったり、通勤時間が長いと出来るのが通勤の壁です。この通勤の間にリワークの不安や焦りからパニック症状になるというケースもあり、その為に会社に出勤出来なかったという話もよくあります。
通勤の壁を無くす・低くするには、朝なら
「リワークの時間帯を朝のラッシュ時間帯を外した時間にして会社へ出社しやすくしてみる」
というのが有効的です。帰りの場合も人が余り多くない時間帯にサッと帰れるようにして、勿論リワーク中に残業させるような事はしないでください。
うつ病からのリワークを妨げてしまう5つの壁:その5.話し合い不足の壁
リワーク前には
- うつ病休職者と会社
がリワークプログラムやリハビリ出勤といったのについて話し合いをしますが、これ以外に
- うつ病休職者と家族
の間でも話し合いはされる事でしょう。もしもこの時に家族がうつ病についての正しい知識や情報を持っていなくて
「本当は治っているんでしょう。早く仕事に復帰したら。」
という話し合いであれば、うつ病休職者にはプレッシャーとなってしまいます。この他にも
- 家族に介護を必要とする人がいる
- 家事、育児に手助けが必要
という『家庭の事情』があると、
「自分がリワークしたら介護する人がいなくなる」 「妻が体調が悪く、家事・育児を自分がしないといけない」
という思いが心の中にあるので、
『自分はまだ治っちゃいけない』
という潜在意識に近いものが出来てしまい、これがうつ病休職者をリワークから遠ざけたり、妨げていたりします。
こういった話し合い、またはお互いの意見がきちんと分かりあえていないのが
『話し合い不足の壁』
です。話し合い不足のままうつ病休職者がリワークすると、最初は問題ないように感じますが、段々とリワーク者が
- 作業力、集中力が低下する
- ふさぎ込む
- 遅刻、早退、欠勤を繰り返すようになる
というのが見られるようになります。
こうした問題、特にリワーク者本人と家族といった社員のプライベートな部分に会社側が関係していくというのは、ちょっと気が引けるかもしれません。しかし、こうした思い込みや潜在意識というのがあると、リワークの成功は難しくなります。
もし、うつ病休職者と家族の間に話し合い不足の壁を感じたら、
「何かご家庭の事で復職を考えてしまう理由があるなら、話して頂けませんか?一緒に考えれば何か方法が見つかるかもしれません。私達は○○さんの不安が出来るだけ少なくしてもらって、リワークをしてもらいたいのです。」
と伝えると、リワーク者本人も抱えている不安や家族の事を話しやすくなる効果があるので、話し合い不足を解消出来るメリットもあります。
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