YSこころのクリニックスタッフブログ

現代のうつ病事情を読み解く!東京都江東区門前中町の心療内科・精神科「YSこころのクリニック」がうつ病に関する様々な情報をお届けします。

うつ病休職者のリワークは、なぜ失敗する事が多い? そしてその対策とおススメなものについて

f:id:yskokoro:20150907150339j:plain うつ病による休職者というのは現在分かっているだけで50万人程といわれています。この中でうつ病の症状が良くなり、仕事が出来るようになると「リワーク(復職)」という次のステップへ進んでいきます。

しかし、うつ病休職者のリワーク成功率というのは10~20%くらいで、1年以上リワークを続けて通常勤務へとなった人というのは1~2%とかなり低いです。ですから50万人程の休職者の中でリワークから通常勤務になれる人は、恐らく1万人にも満たないです。

どうして、うつ病休職者のリワークはそんなに失敗したり、難しいとされているのでしょうか?そしてその失敗を防ぐ対策というのはあるのでしょうか?

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1.会社側のリワーク失敗の原因

会社でのリワーク失敗の原因となるのは、うつ病休職者を受け入れる会社側の準備不足が一番にあります。この準備不足には

① うつ病休職者の症状を診断書だけで判断する
② うつ病休職者とリワークについての話し合いが不十分
③ 慣らし出勤やリハビリ出勤の内容がきちんと出来てない

というのがあります。

①の診断書だけの判断というのは診断書で「職場復帰しても大丈夫です」となっていても、実際にはうつ病の症状でもある、睡眠不足からくる生活リズムの乱れや作業力や集中力の低下といったので

「直ぐに仕事が出来る程、回復しているワケではない」

のです。ですから診断書でOKだからといって、いきなり休職前の仕事をさせたりするのは無理ですし、「完治した」と考えるのは誤解と言って等しいです。そしてこれらが休職者のうつ病を悪化させ、会社でのリワークを失敗せせる原因となっていきます。

2.まずは確認と話し合いを綿密に

うつ病休職者のリワークOKに対する考え方の違い、話し合い不足による会社リワークの不備を失くすには、まず診断書を提出されたらそれをよく確認しましょう。そして診断書に「復職OK」と記載があっても、

  • 現在の症状で気をつけないといけない点
  • 通院治療が必要な場合、どのくらいの頻度か
  • 再発、悪化防止を兼ねて、避けた方がいい仕事内容があるか

というのをうつ病休職者との面談でチェックしてみてください。この時、気をつけないといけない点や通院の頻度といったのは記載があるかもしれませんが、避けた方がいい仕事内容については書かれていないと思うので、うつ病休職者に

「診断書を作成してもらう時に、避けた方がいい業務内容を記載してもらってください。」

と一言添えるのも対策としては良いと思います。また診断書だけやうつ病休職者との面談で判断が難しい部分については、勤務医が在中している企業であれば勤務医に相談してみましょう。勤務医がいない場合は、うつ病休職者の主治医に連絡して別に文書で提出してもらうか、直接相談してみてください。

ここでもし、うつ病休職者の主治医に連絡を取る・相談をする場合は、きちんとうつ病休職者に前もって了解を得てからというのを忘れないでくださいね。ベターな方法としては

「うつ病休職者と一緒に病院を訪れる」

という風にすると、うつ病休職者が「何を聞くんだろう」という不安を感じずに済みます。

3.うつ病休職者の生活リズムが、リワークを失敗させる原因に

会社リワークの失敗は受け入れ側の会社に原因がありますが、そればかりとはいえません。リワークを行ううつ病休職者にも失敗とさせてしまう原因があり、中でも

『うつ病休職者の生活リズム』

というのが大きく関係している考えられています。

うつ病で休職中というのは症状がひどい時には睡眠不足や引き籠りといったのがあります。リワーク出来るようになるというのは、この部分がある程度回復しているといえます。

しかし、一度会社を離れた生活リズムになっているので、これをきちんとリワーク出来る生活リズムにしないと最初の慣らし出勤やリハビリ出勤の段階で、うつ病を再発・悪化させてしまうのでリワークを続けることは困難となります。

4.生活リズムを少しずつリワークモードへ、そして体力・作業力の向上

うつ病休職者の生活リズムによるリワーク失敗を防ぐ対策としては、

① 生活リズムを少しずつリワークモードへしていく
② 体力、作業力・集中力の向上

がポイントになってきます。

①の生活リズムをリワークモードへというのは、例えば休職中に起床・就寝時間が日によってバラバラとなっていたら、まずこれを会社へ出社するのに間に合う時間に起床そして翌日に負担がかからない時間に就寝というようにします。

最初はこれだけでも大変に感じるかもしれないでしょうけど、まずここをクリアしないと出社できない、夜眠れないという状態が続き、ここからリワークの失敗が始まってしまうのは大いにあり得ます。だから、まずは土日も含めて毎日、起床・就寝の時間を一定にして慣れるようにしていきましょう。

次にうつ病で休職していると食欲不振、睡眠不足、引き籠りといったので体力が低下していたり、作業力や集中力の低下といったのもうつ病の症状もあります。

うつ病休職者のリワークというのは、大まかには

通勤のみの慣らし出勤

数時間・数日単位でのリハビリ出勤

フルタイムに近い形でのリハビリ出勤(残業・出張等なし)

通常勤務に近い形でのフルタイムでのリハビリ出勤(残業のみあり等)

通常出勤

という流れになっているのですが、最初の通勤のみの慣らし出勤でも実際に会社まで通勤するのですから「通勤に耐えうる体力」が必要となりますし、例えば数時間のデスクワークといったリハビリ出勤でも実は同じ時間くらいのウォーキングと同じ体力を消耗しているといわれています。

「体が資本」という言葉があるように、リワークが決まったら体力をつけてこれからの長い道のりに備えましょう。

そして作業力・集中力の向上についてですが、プランとしては

  • 図書館等の職場と似た環境で読書や新聞を読んでみる
  • パソコンで簡単なデータ入力をする
  • ★リワークに備えて、「自分の出来る事・出来ない事」を整理する

といったのがあります。まず最初の職場と似た環境というのには

『自分をリワークする環境に慣れさせる』

目的があります。だから職場と似た「静かだけど、多少の雑音がある場所」で集中して読書や新聞を読んでみるというのも一つのリワークの為のリハビリになります。

またパソコンでの簡単なデータ入力は実務的なリワークの為のリハビリです。ご自分で文章を考えて入力となると疲れが出やすく、作業力が途切れがちになるので始めは新聞のコラムといった決められた文章を見ながら入力から行い、慣れてきたら簡単な資料作成やデータ入力にトライしてみましょう。

最後の★印のリワークに備えて「自分の出来る事・出来ない事」を整理するですが、この部分が分かっているのと分かっていないのでは

「リワークの成功率や持続性」

に大きな差が出てきます。この整理というのは頭の中で考えると上手く出来ないので、

  • 往復1時間の通勤が出来る
  • あらかじめある文章やデータの入力が2時間出来る
  • 2時間以上の作業は疲労感が出やすい

というように箇条書きでメモしていくと整理しやすいですし、会社側との話し合いでメモを見ながら自分の出来る事・出来ない事を的確に伝える事が可能となります。そして会社側としてもリワークプランが作りやすく、準備もしやすくなります。

この整理したものをパソコンで入力するという合わせ技もありますが、これについては無理をするとリワーク前に「うつ病再発・悪化」となってしまいますから、ご自分の症状や体調と相談しながら行ってくださいね。

5.会社側におススメな「社内リワークチーム」

うつ病がリワーク出来るまで回復したのは会社側・休職者側、どちらにとっても嬉しい事です。しかし少しずつステップを踏んでいく必要があるのが、うつ病休職者のリワークでの難しさとなっています。

そんな難しさや失敗を回避する為に会社側とうつ病休職者におススメなものがあります。それは

会社側:社内リワークチーム
うつ病休職者側:リワークプログラム

です。順を追ってご紹介すると、会社での社内リワークチームは

  • うつ病休職者のリワークプログラム作成とフォロー

をメインとしたチームで「誰がいないといけない」というのはありませんが、基本は

  • うつ病休職者本人
  • 人事や労務のスタッフ
  • リワーク場所となる職場の上司
  • 勤務医やうつ病休職者の主治医

といった人達がメンバーとなります。

「普段の仕事があるのに」と思うかもしれませんが、もしうつ病休職者のリワークを

「会社側がきちんと対応していなかった」

と訴えられたら、どうしますか?これ脅しにも聞こえるかもしれませんが、最近、うつ病等の精神疾患による労災基準が分かりやすくなり、実際にこうした訴えが多くなっています。

また、うつ病休職者のリワークをその場、その場でしのぐような形で行えばフォローはリワーク先の職場任せとなってしまいますし、うつ病休職者が相談したい・フォローして欲しいと思っているのに話す先が見当たらないとなると、

「相談出来ない」
「フォローされない」

というストレスがうつ病休職者にかかってしまうので、間違いなくリワークは失敗への道を進んでしまう形となります。

こんな時は皆で

  • リワークプラン作成担当
  • うつ病休職者の勤務態度チェック担当
  • 相談窓口担当

というように少しずつ分担していくと、「あれも、これも」となりませんから普段の業務にもそう影響は出ないのではないでしょうか。

このリワークチームそして会社での社員のメンタルケアというのは、国としては今後『義務化』していく方向になっていて、その為の法改正や指針発表をしているので、今の内そしてうつ病での休職者が居る・居ないに関わらず基盤だけでも作っておいた方がいいと思います。

6.うつ病休職者側におススメな「リワークプログラム」

うつ病休職者のリワークに向けて、生活リズムの改善や作業力や体力の向上におススメとなるのが

『リワークプログラム』

です。

リワークプログラムはうつ病治療を専門にしている医療機関やその診療科がある総合病院、あとは全国にある地域障害者職業センターや精神保健福祉センターで受ける事が出来ます。

プログラムでは

  • うつ病についての正しい知識
  • 投薬管理の方法について
  • 自分のうつ病を起こす考え方の発見と対処の仕方
  • グループでの話し合いでコミュニケーションの取り方を練習する
  • データ入力や書類作成といった実務的な作業力・集中力の向上
  • スポーツやゲーム等で体力アップ

といったのを学校の時間割のようにして行います。この時、専門のカウンセラーや作業療法士が指導してくれますから、症状についての相談や改善策といったのを相談出来るので会社での職場復帰をよりスムーズにしてくれる効果があります。

リワークプログラムは殆どは『通所』するスタイルとなっているので「受けたいな」と思っても、通所できる状態になっていなければ、まずは通所出来るまで回復するように努めてください。

そしてリワークプログラムに通所出来るまで回復したら、主治医に相談して許可と行っている医療機関を紹介してもらいましょう。あと医療機関でリワークプログラムを受ける場合は、医療費負担が必要となりますのでこの点はリワークプログラムを行っている医療機関に確認してください。

うつ病休職者のリワークは失敗しやすいものではありますが、それは準備や対策が不十分というのが原因となっているのが多いので、ここをクリアすれば少しずつでも確実にリワーク成功へと近づけるので

『焦らず、一つずつ』

というのもうつ病休職者のリワークを成功させる秘訣といえるかもしれません。

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