うつ病休職者にとって「自分の病を治す」というのは難しく長い道のりですが、それ以上に難しいのが
『うつ病休職者のリワーク(復職)』
ではないでしょうか?皆さんの周りでももしかしたら
「うつ病で休職していて復職したけど、また休職してる」 「うつ病からリワークしたけど上手くいかなくて、退職してしまった」
という方がいたり、そんな話を聞いた事ありませんか?
実はうつ病休職者が1年以上リワークしている人というのは約5%あるかないか、ほんの一握りです。この一握りというのに
『うつ病休職者のリワークの難しさ』
が隠れています。この難しさを改善し、リワークをスムーズに出来るようにするのに
『リワークプログラム』
というのがあります。今回はこの2つにスポットをあてて、お話していきます。
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1.うつ病休職者はリワーク出来ても『完治はしていない』
うつ病休職者から
「主治医から復職しても大丈夫と許可が出たので、復職したいです。」
と連絡があった時、大抵の人は
「復職OK=うつ病が治った」
と思うかもしれませんが、復職OKとなったとしても
『うつ病は完治していません』
ちょっと医学的な話になりますが、うつ病の人が日常生活を病気前のように普通におくれたり、リワークが出来ようになるのを
「寛解(かんかい)」
といって、これは病状が完全に回復しているのではなく、
『80%くらい回復している』
状態です。だから「20%は、うつ病が残っている」のです。この寛解の状況で復職となった時、もしも
「良かった。完治したんだな」
と勘違いして休職前の仕事内容と同じ事をさせたり、最初からフルタイムでの勤務となると残っている20%の割合が増えていき結果としてうつ病の悪化→再度の休職か退職、そしてこのちょっとした誤解がうつ病休職者のリワークの難しさとなってしまっているのです。
2.休職者の準備不足
次の難しさは
『休職者と会社の準備不足』
についてです。
うつ病になると、その症状の中に
- 作業力や集中力の低下
というのがあります。この部分を例えば読書やパソコンで簡単なデータ入力といったリハビリをせずに、いきなり会社に復職となると、
- 今まで出来ていた事が出来ない
というストレスがかかったり、パニック状態に陥る事が考えられます。またリワーク後の生活は休職中の生活とはガラリと変わるのですが、休職中の生活リズムのままで復職すれば当然ですが
- 生活リズムの変化による疲れやストレス
- 通勤時の電車やバスでパニックになる
というのが考えられます。仕事には直接関係ないかもしれませんが、この部分は休職者が復職を決めた時にこうした状況に陥るというのは
- 通勤がきちんと出来るか?
- 生活リズムが復職に支障がないようになっているか?
という準備が不足していたからといえます。
3.会社側の準備不足
今度は会社側の準備不足についてですが、ここで「No.1と言っていい」くらいうつ病休職者のリワークを失敗の方向に導いてしまうのが
『うつ病休職者との話し合い不足』
です。
先程も述べましたが、うつ病休職者が復職可能となった時というのは決して「うつ病が完治」しているのではなく、
『うつ病は残っているけど、復職が出来るまで回復した寛解というレベル』
です。
ですから、いきなりフルタイムで休職前の仕事をさせるというのは「最初からリワークをさせる気がない」と取られてもおかしくありません。もしうつ病休職者から復職可能の連絡がきたら、まずはきちんと主治医からの診断書を提出してもらいましょう。そして
- 休職中の様子
- 現在の生活状況
- ★復職時の勤務日数や時間
- 復職時の職場について(前職場か、新しい職場か)
- ★出来る作業、出来ない(避けたい)作業
- ★復職中の通院や投薬について
といったのを、じっくりうつ病休職者と話し合ってください。中でも★印をつけている3点については、実際にリワークするにあたって最も重要となってくる点なので、これらについては特に多くの時間を割いて話し合うようにしましょう。
そしてこれらの話し合いを済ませてから、慣らし出勤やリハビリ出社の準備をしていくとうつ病休職者の症状の悪化を防げる効果があります。
話し合いをしながら、または実際のリワークの様子を見ながら準備をしていくという方法もありますが、うつ病の場合は出来る限り休職者の状態を事前に詳しく分かっている方が、後での修正やトラブルが起きた時のフォローが上手く出来ない確率が高くなるので、そうなると
「会社側のうつ病休職者に対するリワークケアの準備不足」
となってしまいます。
4.焦らずに準備を整える
うつ病休職者と会社。どちらも準備不足によるリワークの失敗を回避する為のポイントは
『焦らずに準備を整える』
ではないかと思います。うつ病という辛い病になり、そこからの懸命な治療でリワーク出来る寛解というレベルになった時、うつ病休職者には
「また働ける!」
という喜びが出てくるでしょうし、これは会社側としても同じといえます。働ける、会社に行けるという喜びが大きければ大きいほど、うつ病休職者はそちらの方にばかり気を取られてしまい足元の
- 生活リズムが復職した時に問題ないリズムになっているか?
- 作業力や集中力の改善及びリハビリ
といった部分が目がいかなくなってしまいます。
また会社側も復職出来るというのに重きをおいてしまうと、本来必要な
- うつ病休職者が本当に復職可能か否かの見極め
- リワークプランの作成やフォローについて
といったのが怠りがちになります。「急がば回れ」という言葉があるように、うつ病休職者のリワークをよりスムーズに、そして最終ゴールと言える通常勤務に結びつけるには足元をしっかり固めるという意味でも
『焦らずに準備を整える』
のが大切となります。時には煩雑で「このくらいでいいかな」と思ったり、「本当は不安だけど、復職出来なくなったら嫌だから、我慢しよう」なんて考えていると、つい「いいや」となってしまうのでポロポロとリワークプランの粗が目立つようになってきます。
そうなるとうつ病休職者にも、会社側にも「後味の悪いリワーク」となるのは間違いないです。これを防ぎ手助けしたり、うつ病休職者の復職の難しさを改善してくれるのが
『リワークプログラム』
なのです。
5.リワークプログラムの基礎知識
ここまでの話の中で何度も出てきている
『リワークプログラム』
とは一体何か?というと、
『うつ病休職者のリワークの成功とうつ病の再発の予防』
を目的とした学びの場みたいなものです。うつ病の治療を専門の医療機関で行っているのを同じように、リワークプログラムでは
- 作業力や集中力の回復を助ける
- 自分の考え方のクセを知り、復職後のトラブルやうつ病悪化を防ぐ
- グループ作業等で他人とのコミュニケーションの取り方
といった復職後に必要だけど、うつ病休職者一人では出来ない事について学んでいきます。
このリワークプログラムは、うつ病を専門としている精神科や心療内科といった医療機関や全国にある精神保健福祉センターといった所で行われています。費用は精神保健福祉センター等の公的機関であれば無料な事もありますが、公的・医療機関どちらでも医療費負担が必要な場合が多いです。
一体どのくらいの医療費がかかるかというと、通常の3割負担で例えばリワークプログラムに週に3回・1ヶ月で12回通ったとすると1回の医療費が約700円ですので
700円 × 12回 = 約8,400円
となります。これに通院・投薬治療をしている場合はその分の医療費もかかるので、もし通院・投薬治療に5,000円かかっているとしたら、合計で約13,400円となります。
もしこの医療費負担に不安を感じるのでしたら「自立支援医療制度」というのを利用すると、自己負担分が原則1割負担となるので、上記の合計額約13,400円の半額程になります。
但し、この自立支援医療制度を利用するには市区町村役場の窓口で必要書類を添えて申請する必要がありますので、利用を考えるなら前もって申請の仕方を確認しましょう。
6.リワークプログラムを受けるメリット
リワークプログラムを受けるメリットとして挙げられるのに
- 作業力や集中力のリハビリが出来る
- 会社で仕事をしていた時の感覚を取り戻す
- 自分のうつ病を起こす考え方を知り、改善策を作る事が出来る
- 運動プログラムでの体力向上
- 集団でのゲームや作業でコミュニケーションや対応力を身につける
といったのがあります。
うつ病を患うと気分の落ち込みや不安感といったのから家に引き籠りになったり、作業力や集中力の低下、睡眠障害による生活リズムの乱れといったのが起こりますが、これを一人で改善するというのは並大抵のものではありませんし、どちらかといえば不可能に近いです。
リワークプログラムはこうしたうつ病休職者一人では不可能な事を、その人の症状に合わせて可能にしていくものです。
通常リワークプログラムは昼間に通うのが主となっていますが、中には既に会社に復職している人の為に夜間行うクラスもあるので、これを利用すれば会社で復職しながらのリワークケアが可能となります。
ですから復職OKの許可が医師から出たら、会社へ直ぐに連絡をする前にリワークプログラムについて主治医に相談してみて、受けられるプログラムがあったら受講してみてから会社へ復職の連絡をしても遅くはないでしょうし、その方が通常勤務というゴールまでリワークを続けやすくなります。
そして会社としてもリワークプログラムを受けている時のうつ病休職者の様子をプログラム担当者やスタッフから聞けるので情報交換が出来るので、
「ちょっと様子がおかしいな」
という時にリワークプログラムでの様子を聞いて、直ぐに会社での復職プランの修正やフォローをしていけます。
こういったメリットを考えるとリワークプログラムは
『うつ病休職者にとっても、会社にとっても有益』
といえるのではないでしょうか。
7.リワークプログラムを受ける際の注意点
リワークプログラムを受ける時に注意しておいた方がいい点がありますので、最後にご紹介します。
①リワークプログラムは通う必要がある
リワークプログラムは行っている医療機関や施設に『通所』する必要があります。だから、まだ家から出られない、公共の交通機関に乗れないといった状態では通うのは無理といえますのでリワークプログラムを受ける為には『通えるまでに回復するのが先決』です。
②休みたくなっても、準備して家を出る
リワークプログラムに慣れるまでの間に、休みたくなったり、つい遅刻をしてしまったりという事が少なからず起こります。「1日だけだから」と思っていても一度自分に楽な方を選んでしまうと、そのままズルズルとそちらの方へ流れていってしまいます。
もし休みたい・遅刻しようかと考えたら、それでもまずは準備をして家を出てみてください。それでも「どうしても無理だ」と感じたら、スタッフへ相談して早めに改善策を講じましょう。
③リワークプログラムに行く生活リズムを作っておく
これは注意というよりも、おススメに近いのですが通うのが基本のリワークプログラムでは
- 通う前の準備
- 施設へ通って帰ってくる
というプロセスが生まれます。となると起床時間や家を出る時間といったのを決めてそれに合わせて行動するという能力も求められますから、リワークプログラムに行くのが決まったら
『リワークプログラム用生活リズム』
というのを作っておくと、実際通い始めた時に面倒になる事が少なくなります。このリワークプログラム王生活リズムがあれば②の行きたくない・休みたいというのを最小限に抑えたり、実際に会社での復職となった時に応用出来ます。
以上がリワークプログラムを受ける際の注意点ですが、うつ病で休職後の復職に「焦り」は禁物です。既にこれを読んで、もしかしたら
「あれ、しなきゃ」
と思っているうつ病休職者の方がいるかもしれませんが、決して焦らないでください。まずはご自分のうつ病の症状を回復させないと、リワークプログラムが受けれたとしてもそれが「受けてよかった」と思うか、「受けなければよかった」と思うかを考えた時に、後者になると思いませんか?
ですので、どうぞ焦らずに。この記事も「ふ~ん、こんな情報があるんだな」くらいに留めておいてください。そしてリワークが出来るようになった時に、「そういえば、リワークプログラムの情報があったな」と思い出して参考にしてもらえると、作った私としても有り難いし嬉しいです。
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