今うつ病患者は300万人いるといわれていて、この数は年を追うごとに増えていっています。これだけ患者数が多いと、もしかしたら皆さんの会社でも
- うつ病を患っている社員がいる
- うつ病で休職中の社員がいる
という事があるかもしれません。うつ病患者の増加そしてメンタルヘルスの不調を訴える人の増加という状況から、国は
「2020年を目標にメンタルヘルスに関する措置が受けられる職場を100%に」
というのを閣議で決定しました。そして平成26年には
「メンタルヘルス対策の充実と強化」
というのを新たに加えた労働安全衛生法の改正案が国会に提出され、現在この改正案は成立する方向で話が進んでいるそうです。もしこれが成立すれば、今後会社として
『従業員のメンタルヘルス対策』
が必須となってきます。しかし、
「一体、メンタルヘルス対策って何をしたらいいんだろう?」
というのが実情ではないかと思います。そこで会社での『メンタルヘルス対策』の基礎となる
- メンタルヘルス対策チームの作り方
- 心の健康づくり
というのについてまとめてみました。
1.なぜ、会社としてメンタルヘルス対策が必要なのか?
まず最初に
「なぜ、会社としてメンタルヘルス対策が必要なのか?」
というのからお話します。近年、うつ病や心身症といったメンタルヘルスの不調で会社を休職したり、労災を申請するケースが増えています。こうしたケースを減らす為に
- 2020年までに100%の事業所で従業員がメンタルヘルスの措置を受けられるように
- 従業員のメンタルヘルス対策の充実と強化
というのを国は促進しています。今までどちらかというと
「うつ病やメンタルヘルスの不調は本人の個人的な問題」
とされてきていました。しかし国がこうしたのを促進する=国の方針ともいえる事なので、今後は社員一個人ではなく、企業(会社)としての取り組む必要があります。
またもう一つの理由に、精神障害での労災申請に新しい基準が設けられ従来よりも分かりやすくなったので、
従業員本人や家族がメンタルヘルス対策の不備や落ち度を訴える
という事が増えてくるといわれています。こうした理由から対応が後手にならないようにする為にも、会社としてのメンタルヘルス対策が必要となってくるのです。
2.早速、メンタルヘルス対策チームを作ろう!
会社としてメンタルヘルス対策がなぜ必要なのかが分かったところで、早速
『メンタルヘルス対策チーム』
を作りましょう。ここでメンタルヘルス対策チームには、どういった人が必要か?というと
①従業員代表 ②管理監督者 ③人事・労務担当者
が基本メンバーとなります。
これに社内に産業医が常駐している場合はメンタルヘルスチェックを行った際のフィードバックやうつ病で復職した従業員の体調・心身面のサポートの為にメンタルヘルス対策チームに入ってもらいます。
3.産業医がいない場合は、どうするの?
メンタルヘルス対策チームを作る時に、1つ問題となるのが「産業医」についてです。というのも、
従業員が常時50名以上いる場合は産業医を選任しないといけない という国の法律がありますので比較的大きな会社であれば産業医はいますが、50名以下や中小企業と呼ばれる会社の場合だと産業医の選任というのは必要がないので、殆ど在籍していないと思います。
うつ病や心身症といった精神疾患は人によって症状が様々ですし、「昨日は調子が良かったけど、今日はとても調子が悪い」と一進一退の場合が多いです。ですから、医師の存在というのはメンタルヘルス対策チームでは重要といえます。
もし従業員が50人以下の会社の場合、今後のメンタルヘルス対策の為に産業医の選任を検討してみるのも一つの方法ですが、直ぐに見つかるとは限りません。そこでそういった時は
地域産業保健センター
を利用してみましょう。
地域産業保健センターは全国にあり、ここでは
- 長時間労働においての面接指導や相談
- メンタルヘルスケアについての相談
- 戸別訪問による産業保健指導
というのを行っています。
また産業医の条件を満たしている医師や産業保健コンサルタントの情報も提供してくれるので、従業員数が50名以下でメンタルヘルス対策チームを作った時は、まず地域産業保健センターにメンタルヘルス対策について問い合わせてみると、色々な情報を入手しましょう。
4.心の健康づくり計画を立てる
メンタルヘルス対策チームが出来たら、次は
『心の健康づくり計画』
です。心の健康づくり計画はこれからメンタルヘルス対策の指針となり、また
「会社として、こういうメンタルヘルス対策を行う」
というのを従業員に示すものにもなります。心の健康づくり計画を従業員にキチンと表明すれば、もしも従業員がメンタルヘルスの不調を感じた時に、
- 社内で相談できる場所(人)がいる
- 会社として適切な措置を取ってくれる
という安心感があります。次の5からはメンタルヘルス対策チームが出来てからの、実際に心の健康づくり計画を立てる時の流れについて、説明していきます。
5.ステップ1:問題点をチェック、改善・対策を行う
メンタルヘルス対策チームが出来たら、
現状での社内メンタルヘルスの取り組みについて
を調べて問題がないかを把握します。ここで問題があれば対策を考え・実行していきます。もし今までメンタルヘルス対策チームがなく、またメンタルヘルス対策自体を何もしていないという状況なら、まず
社員のメンタルヘルスチェックの導入
から始め、このメンタルヘルスチェックが定期的に来るように職場環境を整えていくというのも一緒に考えましょう。
社員のメンタルヘルスチェックが定期的に行えるようになれば、部署・役職・男女といった幅広いデータを基にうつ病やメンタルヘルスに不調を起こしやすい年代や部署というのが分かってきたり、会社として必要なメンタルヘルスケアの研修が効果的に行えるようにります。
6.ステップ2:必要な人材の確保と社外資源の活用
ステップ1でメンタルヘルス対策での問題点が見えてきたら、次のステップ2ではメンタルヘルス対策をする上で必要な人材を確保や社外資源を活用を考えます。ここで必要な人材というのは、産業医や保健師といった人が主です。
社外資源というのは先程お話した地域産業保健センターやメンタルヘルス対策をしている民間企業といったのです。こういったのを活用して、全社員にうつ病の正しい知識やメンタルヘルスのセルフケアについての研修について具体的に決めていきます。
★産業医はメンタルヘルスケア専門の医師が良いの?★
もし産業医の常駐を考えた時、「メンタルヘルスケアやうつ病の専門医を選んだ方が良いのかな?」という疑問が出てくるかもしれません。これについては特にそういった専門医である必要はありません。
ただそちらの情報に詳しかったり、メンタルヘルスケアに積極的に関わってくれる医師の方が会社としてのメンタルヘルス対策がより有効活用出来るので、もし産業医を選ぶのであれば基準の1つにしておくと良いと思います。
★セミナーや民間企業のメンタルヘルス対策を利用する時の注意点★
ステップ2では社員向けのうつ病セミナーやEAPと呼ばれるメンタルヘルス対策の一環となるプログラムを行っている民間企業の利用というのを検討する機会が出てきますが、ここで注意しなければならないのは
「情報を丸ごと鵜呑みにしない」
事です。セミナーやEAPというのは社員教育そして今後のメンタルヘルスケアにおいて高い利用価値がありますが、そこでの情報が
- 全て自分の会社に合っているか?
というのには疑問が残りますし、
- 実際にセミナーでの情報を活用してみたら、思うようなメンタルヘルスケアが出来なかった
- EAPを導入したけど効果が余りなかった
という事が起こりえます。だから、もしもセミナーや民間企業のEAPを利用する場合は、まず
『自分の会社でのメンタルヘルス対策では何が必要なのか?』
というのにポイントをおいて、どんなセミナーを利用するか?またEAPの導入を検討する必要があるのか?というのを判断していきましょう。そうすればコスト面を節約出来るだけでなく、必要な情報だけを取り入れて、会社に最も合った形でのメンタルヘルスケア対策が出来るようになります。
7.ステップ3:労働者へのプライバシーの配慮
通常の健康診断の内容も「個人情報」ですからプライバシーの配慮は必要ですが、うつ病や心身症といった精神疾患は患っている本人が敏感に反応してしまいますし、
「出来る事なら周りには知られたくない」
という心情が常です。そこでメンタルヘルスチェックにおいての結果や社員でうつ病を患った人が出た場合の本人のプライバシーの配慮が特に必要となります。この点においては、ただ周りに漏らさないようにするというのではなく、
- 個人情報を取り扱う管理者の決定
- 個人情報の管理法
- 活用する際の基準
といったのをメンタルヘルス対策チーム内で話し合って決めていきましょう。そして決定した事項については、社員全員に明確にしておくとプライバシーの配慮がされているというのが分かるので、不用意にプライバシーが漏れるという不安がなくなります。
こういった流れでメンタルヘルス対策チームを作っていくと、問題提起から社員のプライバシーの配慮までをスムーズに行えるようになるので、これからメンタルヘルス対策チームを作るというのであれば参考にしてください。