皆さんがもし
「うつ病の治療に、どんなのがあると思いますか?」
と尋ねられたら何と答えますか?多分、多くの人は「薬を使った治療」と答えるでしょう。確かに、うつ病の治療ではまず「不安や抑うつを和らげる」のが先決となるので、薬を用いて症状を抑えるというのが基本となっています。
しかし、うつ病治療法には『薬を使わない』があるのを、ご存知でしょうか?それは「精神療法」と呼ばれている治療法でその中の代表的なのに
『対人関係療法』
があります。
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人とのコミュニケーションの取り方、相手の考えや話し方にストレスを感じやすいうつ病では、この対人関係療法を行う事で症状が改善されたり、薬を使わずに治せるという効果があります。そんな対人関係療法について、まとめてみました。
目次
1.対人関係療法って何だろう?
うつ病発症の発端となりやすいのに
【周りの人とのコミュニケーションで起こる考えや気持ちの違い】
というのが1つあります。対人関係療法では、こうした原因からくるうつ病の症状を改善していくのですが、最初にお話したように薬を使って治す治療法ではないので、
- 副作用がない
- 「自分で治せた」という達成感を患者が感じられる
というメリットがあるので、現在、注目されている治療法といわれています。
2.対人関係で「特に」うつ病になりやすい要因
ここで
「対人関係でうつ病になりやすい要因」
には、どんなのがあると思いますか?先程お話した「周りの人とのコミュニケーションで起こる考えの違い」の他にも
- 喪失体験
- 役割変化
- コミュニケーションギャップ
といったのがあります。では、これらを上から順に説明していきましょう。
喪失体験
喪失体験で多いのは家族や親友といった「自分の身近にいた人を亡くした」というものです。人以外にも可愛がっていたペットが亡くなったという時でも飼い主にとっては「ペットロス」と呼ばれる程の強いショックを受けているので、そこからうつ症状やうつ病になるというケースもあるので、意味を広く捉えるなら
「大切な人や物を亡くした(失くした)」
となります。
役割変化
例えば「夫を亡くした」喪失体験から、自分がその家の家長となった時にそれまでした事がない、やった事がない事をする必要が出てきます。これが役割変化です。
役割変化は家庭内だけでなく、会社で昇進や学校を卒業して就職したというのも、今までとは違う役割を負いますのでこれも役割変化といえます。
コミュニケーションギャップ
この言葉を聞くのは「若い人と話している時」というイメージがあるかもしれませんが、対人関係療法の場合では例えば
「田中さんにこう話したんだけど、思っていた答えと違った」 「鈴木さんにこう言われたけど、私はこう思う。けど言えなかった」
等の
『相手との意見や気持ちのズレ』
という意味でのコミュニケーションギャップです。
「そんなのよくある事じゃない」
と思うかもしれませんが、うつ病患者の中には自分の考えへのこだわりが強過ぎたり、「絶対、こうじゃないと!」という思いが強いという人もいるので、それが相手に伝わらない・分かってもらえないというコミュニケーションギャップも感じてしまい、そこからストレスへと変化してうつ病になる場合もあります。
喪失体験、役割変化そしてコミュニケーションギャップ。どれもそんなに珍しい事ではないかもしれません。ですが、こうした
「よくある、ちょっとし対人関係」
が、うつ病になる要因となり、それを薬ではなくうつ病患者本人の
- 考え方の方向性を見直す
- 上手くコミュニケーションを取れる手段を考える
ようにしていくのが対人関係療法の治療の特徴です。
3.対人関係療法の治療の基本となる4つのステップ
対人関係療法が何か?そしてうつ病の要因となる対人関係が分かったところで、次は「対人関係療法の治療の基本的な流れ」を紹介します。
ステップ1:今の人間関係をチェックする
家族や会社もしくは学校。皆さんの周りには色々な人がいますよね?対人関係療法のステップ1ではこうした「周りにいる人」と、どんな話をしているかを振り返ってみて、今の自分の対人関係でどこかに問題はないか?改善した方がいいところはないか?というのをチェックしていきます。例としては
- いつも話していると喧嘩になってしまう
- その相手と会話するとストレスを感じてしまう
といった人が特定またはそれに近い存在でいる場合は、「この人との対人関係を、どう改善していくか?」というのにポイントをおきます。ただそういった存在がいるからといって、対人関係療法で「その人との付き合いを止めなさい」となったりはしません。
「そうしないで、どうしたら上手く対人関係を築けるか?」という方向で治療を行って行くので、人間関係が壊れるといった事はありませんから、ご心配なく。
またそういった特定の相手がいなくても、対人関係療法では一度「今の自分の周りの人間関係」をチェックして、問題や改善点を探して次に行うステップ2~4の治療でのポイントとしていきます。
ステップ2:人間関係の変化をチェック
ステップ2では「人間関係の変化」をチェックです。。喪失体験や役割変化といったのから、
『それまでになかった人付き合い』 『今までにない役割を担わなければならない』
というのが発生する場合があります。
皆さんの中にも昇進や引っ越し等で「新しい人間関係」を築いていかなければならなかった事ありませんか?このステップ2では、そうした人間(対人)関係で生じるストレスをチェックしていき、どう改善・解決していったら良いかを探っていきます。
ステップ3:会話の内容をチェックする
人間関係のチェックが終わったら、ステップ3では「会話の内容」をチェックします。これは実際の会話を録音するというのではなく、うつの症状が強くなった時やストレスを感じた時の会話を
- 誰と
- どんな会話をして
- 思ったり、感じた事
- 自分が相手にどういう風に言ったか
- その時のうつの症状の具合やストレスの度合い
というのを記録していく方法が一般的です。
そして医師はこの記録を見ながら、周りの人とコミュニケーションが上手く取れているか?というのをチェックして、時には
「こんな言い方もあるかもしれませんね。」
というアドバイスします。ここで大切なのは対人関係療法では、うつ病患者に
「こうしてください。」
という医師によくある言い方はしません。
それは「こうしてください。」とすると、うつ病患者には強制と感じてしまったり、「こうしなきゃ!」という思いが生まれてしまい、これがストレスとなってうつ病改善の妨げになるからです。
だから「こんな言い方もあるかもしれませんね。」という言い方で、患者本人に
「なるほど」
と納得出来るようにしてから、治療を行っていきます。
ステップ4:相手と話し合う機会を作って、上手に話し合えるようにする
最後のステップ4では
「出来るだけ相手と話す機会を作って、上手に話し合えるように」
していきます。
うつ病でなくても「コミュニケーションが取りづらい相手」というのが、皆さんにもいるかもしれませんが、私達の場合はそんな人との会話でも受け流したりして対処出来ます。
しかし、うつ病の人の場合はそうした対処が出来ずに大きなストレスとして残ったり、
「あんな事、言われた!」 「こんな風に言っちゃった。。。」
という思いがいつまでも心に残ってしまいます。これが抑うつ状態を引き起こし、うつ病となるパターンもあります。
この点を改善していくには、うつ病本人には荒療治と感じるかもしれませんが、やはり相手と話す機会を作って、
- 話し方に慣れる
- 相手の意見や考えを自分で「良いよう方向へ」捉えられるようにする
- 話す事でストレスを感じた時に、上手く解消出来るようにする
のが一番なのでちょっと辛いかもしれませんが、これを行う事で対人関係療法の最終工程となっていきます。もし、この最終工程が上手くいかなくてもステップ1,2,3に戻れば良いので、例えステップ4が上手くいかなくても、大丈夫ですよ。だから、どうぞ焦らずに治していきましょう。
4.対人関係療法を受ける時の注意点
ここで対人関係療法を受ける時の注意点を3つ、お話します。
①専門的に受けたいなら、前もって病院へ確認する
精神科や心療内科では対人関係療法に代表される精神療法を行っていますが、もしも
「対人関係療法を専門的に受けたい」 「うつ病治療のメインとして対人関係療法を受けたい」
というのであれば、先に病院へ対人関係療法を専門的に行っているか確認してから受診してください。一般的な対人療法は行っていても、専門的にとなるとそれを行っている医師や病院が限られてくるからです。もし、どういった病院があるか分からない場合は、
現在、他の病院へ通っている場合 → 主治医に相談 病院へかかっていない場合 → 住んでいる地域の精神保健福祉センターなどに問い合わせてみる
という方法があります。
②通いやすい所を選ぶ
うつ病の症状は「今日は調子が良いな」と思う時があれば、「もうダメだ。。。」と思うくらい悪い時もあり、いわば一長一短といえます。うつ病の治療はどんな治療法であっても定期的な通院が必要が殆どといえます。
調子が良い時は通院に何の問題も無いかもしれませんが、調子が悪い時は電車やバスで行かなければならない所だと「通えない」という状況に陥ってしまい、うつ病の改善や回復までの治療期間が長くなってしまったり、治りづらくなったりします。
だから対人関係療法を受ける為に通院するなら
『症状が悪い時でも通える病院』
を選ぶ時のポイントに加えてください。
③先生には遠慮しないで何でも相談する
対人関係療法を受ける時、当然ですが「医師と患者」という対人関係になります。その時、
「こんな事、聞いたらマズイかな。。。」
と聞いてみたい事を聞かなかったりすると、もしかしたらそこに治療を効果的にするポイントやうつ病になった原因があるかもしれないので、先生には
『何でも遠慮しないで』
相談しましょう。ただ先生を前にすると「緊張してしまう」、「どう話していいか分からない」という事もあるでしょう。そんな時は
- 聞きたい事
- 確認したい事
- どうしてもこれは伝えたい!
というのを、あらかじめメモして持参してください。こうすれば診察を待っている時にメモを見ながら、言いたい事や聞きたい事を整理したり、どう話すかという準備も出来ますよ。
まとめ
「対人関係療法では薬を使わない」と言うと、「そんな治療でうつ病を改善したり、治せるの?」と聞いてみたくなるのではないでしょうか?
うつ病の中にも数種類のタイプがあって、対人関係療法は新型うつ病のような人とのコミュニケーションや自分自身の考え方やストレスの感じ方が大きな原因となっているうつ病では特に治療効果があると言われています。もちろん、それ以外のうつ病患者さんの中にも
「治療開始から最後まで、薬を使わなかった」
という人が多くいます。
- うつ病の治療をしたいけど、薬を使うのは。。。
- 今飲んでいるうつ病の治療薬を減らしたい
- 薬を使う程ひどくはないけど、うつ病の症状がある
という方は「対人関係療法で、うつ病や抑うつ症状を改善・治していく」
というのを試してみませんか?