うつ病を患っている社員が
「主治医から復職しても良いと許可をもらったので、復職をお願いしたいのですが。」
と連絡があった時、会社としては嬉しい報告ですね。
しかし、うつ病休職者のリワーク(復職)というのは実は結構難しく、うつ病の症状が悪化してしまい再度休職あるいは退職したという話はよくあるケースといえます。会社も休職者本人も
「リハビリ出勤を上手く進めたい」 「リハビリ出勤を成功させて、本格的なリワークが出来るようにしたい」
という気持ちは同じだと思います。そこでリワークの第一歩といえる
『リハビリ出勤』
を上手く進めるポイントと、それをするに際して
今から『準備しておいた方が良い事』
についてお話していきます。
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目次
- 「うつ病が完治した」という考えを捨てる
- リハビリ出勤の定義について
- 焦らず、少しずつがリハビリ出勤を成功させるコツ
- リハビリ出勤中、何をしてもらったらいいの?
- リハビリ出勤中、上司はどんな事に注意したらいいの?
- リハビリ出勤時の情報の共有そしてチェックはマメに
- リハビリ出勤を成功させる為に今から『準備しておくと良い』事3つ
1.「うつ病が完治した」という考えを捨てる
うつ病休職者のリハビリ出勤を成功させる為に、まずして頂きたいのは
「うつ病が完治した」
という考えを捨てる事です。普通、病気やけがでの休職による復職というのは完治かそれに近いですが、うつ病の場合は寛解(かんかい)という状態でこれは
『病状が80%くらい回復している=復職できる状態である』
という事です。考え方によっては寛解も完治に近いといえますが、病状が残っている状態ですからリハビリ出勤をした時に、ふとしたきっかけでうつ病の悪化や再発するケースもあります。
ですから
「復職出来るって事は、うつ病が完治したんだな」
と考えて、リハビリ出勤を進めていくのはかなり危険ですし、上手くいく可能性は低いです。だから、
「うつ病からの復職」=うつ病が完治した
という考えを、まず捨てましょう
2.リハビリ出勤の定義について
うつ病休職者のリワークの中でリハビリ出勤というのは
「最初につまずきやすい・失敗しやすい」
部分です。
ここでリハビリ出勤の定義についてですが、うつ病で休職している人はその期間が長くても、短くても職場や勤務といったのから離れた生活をしています。そこで仕事をするのも大切ですが、その前の
- 会社に行く(通勤する)
- 会社や職場に慣れる
というのがリハビリ出勤の定義です。そして、もう一つ
- 仕事をして大丈夫か?
というのを休職者本人だけでなく、会社側が判断する為に行うという目的もあるので、こうしたリハビリ出勤の定義や目的を抑えておいてください。
3.焦らず、少しずつがリハビリ出勤を成功させるコツ
リハビリ出勤をどうしたら成功させる最大のコツ。それは
『焦らず、少しずつ』
です。お話したように、うつ病で休職した場合は「通勤・会社で仕事をする生活」から離れています。だから最初の2週間くらいは
- 週に2,3日、午前中だけ勤務
というので、まずは「通勤そして会社の雰囲気に慣れる」というのから始めます。これが問題なく行えたら次の2週間~1ヶ月くらいは
- 週5日、午前中だけ勤務
- 週に2,3日AM9:00~PM3:00頃までの勤務
と勤務時間や日数を少し増やします。そしてこれも滞りなく行えるようでしたら、次の1、2ヶ月で
- 週に3日(1日おき)にフルタイム勤務
- 週に5日フルタイム勤務
と更に勤務時間と日数を増やしていきます。
うつ病で休職してリワークした人の中には
「リワーク出来るまで、うつ病が回復したから頑張らないと」 「せっかく復職出来たんだから、失敗しないようにしないと」
という思いがあって、まだリハビリ出勤中なのに
「まだ仕事出来ます。」
と言ってしまい、オーバーワークしてしまう事があります。
本人が言ったからとはいえ、リハビリ出勤中にこのような無理を重ねてしまうと、この後の本格的なリワーク中にうつ病の症状が悪化したり、周りとのトラブルの発生といったのが考えられるので、もし本人が「まだ出来ます。」と言っても
「リハビリ出勤中ですし、無理すると明日に差し支えるかもしれませんから、今日はもう帰宅して大丈夫 ですよ。」
と上司や人事・労務担当のスタッフが一声かけて、オーバーワークしないように注意して、うつ病休職者が職場に慣れて自信を持てるリハビリ出勤が出来るように配慮していきましょう。
4.リハビリ出勤中、何をしてもらったらいいの?
リハビリ出勤をうつ病休職者が始めた時、
「何をしてもらったらいいんだろう?」
と思う事でしょう。勤務日数や時間にもよりますが、あくまでも
「リハビリ」=慣れ
出勤ですから、
- 休職する前にしていた仕事と同じ仕事
- 会議の参加
- その他、決定事項がある仕事
といったのをリハビリ出勤で行えば、間違いなく寛解の具合は悪くなりますから、例えば
- データ入力
- 資料整理
- 備品の整理
といった比較的負荷の少ない仕事をしてもらいます。
休職者本人以外の人から見れば「簡単な仕事」と思うかもしれませんが、うつ病を患うと「作業力や集中力の低下」という症状が出る人もいるので、こういった簡単な仕事でも人によっては『辛い』、『苦痛』と感じてしまうので、だから平ビリ出勤中は負荷の少ない仕事で
- 作業力、集中力の回復
- 会社や仕事をする事に慣れる
というのに努めていくと、本格的なリワークをした時にスムーズに進みやすくなります。
5.リハビリ出勤中、上司はどんな事に注意したらいいの?
リハビリ出勤をしている時、職場の上司は仕事をこなせているかを見守るのは勿論ですが、それ以外にはどんな事に注意したらいいのでしょうか?
まず最初に注意した方がいいのは「仕事の依頼の仕方」です。うつ病休職者でリハビリ出勤をしている人に
「今日はこれをしてください。」
と一方的に仕事を依頼、それをしてもらうという形を取ると休職者は
「指示されたから、間違いなくこなさないと」
という思いが強くなってしまい、それがストレスや心の負担となってしまい、ここからうつ病の症状を悪くするきっかけとなってしまいます。だから、もし仕事の依頼をするのであれば
「このデータを入力してください。」
と漠然と指示するのではなく、
「このデータの1P~3Pまで入力してみてください。」
というように指示内容を具体的に伝えてください。そうすると、うつ病休職者も仕事の内容が見えやすいので作業がしやすいですし、集中力や作業力の向上にも繋がります。
6.リハビリ出勤時の情報の共有そしてチェックはマメに
うつ病休職者がリハビリ出勤が出来るようになって、それが問題なく行われていると
「後は、リワークに向けて準備とスタートをさせるだけだな」
と思うかもしれませんが、その前にリハビリ出勤の段階でうつ病休職者が
- 仕事中の集中力や作業力
- 遅刻、早退、欠勤がないか
- 与えられた仕事を問題なくこなせているか?
というのをマメにチェックしてください。ここでのチェックが甘かったり、
- 集中力が続かない
- 遅刻や早退を繰り返し始めた
というのを見落としていると、リワーク後ににうつ病の再発や悪化を見逃してしまう可能性があります。ここで上司側とリハビリ出勤者側に分けて、どんな点をチェックすれば良いかというと
上司側
- 仕事をしている時の集中力や作業力
- 遅刻、早退、欠勤といった出勤状況
- 周囲とのコミュニケーションで問題がないか
といった「仕事を行っている時の様子全般」についてチェックしてください。次に
リハビリ出勤者側
- リハビリ出勤をした日の起床や就寝時間
- 睡眠時間と、よく眠れているか
- 出勤時の疲労感やストレス感
- 精神的な変化と体調の変化
- 飲酒や喫煙状況について
を上司または人事や労務でリハビリ出勤を担当している人に報告してください。
最後の飲酒と喫煙についてですが、リハビリ出勤をした事でストレスや疲労感が大きくなると止めていたお酒や煙草を再度始めたり、過度に量が増えるという傾向があります。
だから、飲酒や喫煙をしている・していて再開したと場合は、この部分も症状が悪化した時の原因を探る時に役立つので報告しておいた方がいいでしょう。
このように仕事そして体調と精神面の両方から、リハビリ出勤が上手く行えているかをチェックすれば、万が一何か問題が起きた時に、早急に解決策を講じる事が出来るので、うつ病の再発や悪化も防げます。
7.リハビリ出勤を成功させる為に今から『準備しておくと良い』事3つ
最後に、うつ病休職者のリハビリ出勤を成功させめる為に今から『準備しておくと良い』事を3つ紹介します。
①前もって社内でうつ病対策チームやメンタルヘルスケアチームを作る
うつ病になる社員がいないのが会社としては望ましいですが、もしもそんな社員が出てしまってからうつ病対策チームやメンタルヘルスケアチームを作ると、チーム自体が機能していませんから、うつ病休職者のリハビリ出勤は上手くいきません。
またうつ病休職者としても、
「リハビリ出勤時の相談や報告をどこにしたらいいか分からない」
となってしまい、ここから心身的なストレスとなりうつ病の状態の悪化となる可能性も考えられます。
そこでうつ病を患っている社員がいる・いないに関わらず、前もってうつ病対策チームやメンタルヘルスケアチームを作っておけば「いざ!」という時にすぐに対応出来ます。
そうすれば、うつ病休職者とそれを支える会社側どちらもスムーズにリハビリ出勤行えるのではないかと思います。
②うつ病についての正しい知識を社員全員が共有する
最近、新聞・雑誌・TV番組で「うつ病」について取り上げられる事が多くなりましたが、
「うつ病についての正しい知識」
を知っているか?と問われたら、「いいえ」という答えが多いでしょうし、正しい知識を知らない為にうつ病休職者がリハビリ出勤をした時に、謂れのない差別や偏見を持たれてしまい、これはうつ病休職者にとっては大きなストレスや心の負担となりますし、
「リハビリ出勤の大きな妨げ」
にもなります。そこで日頃から「うつ病についての正しい知識」を社員全員が知っておくというのは、社内でのリハビリ出勤を円滑に行う為にも、またうつ病患者が増えている現在では
『会社として行った方が良い事』
となってくるでしょう。実はこういった事については数年前から
『会社内でのメンタルヘルスケアの強化と充実』
というのを国は推進していて、これについての今ある条例や法律の改正案も進んでいます。
こうした流れを考えると①のうつ病対策やメンタルヘルスケアチームと合わせて、うつ病についての正しい知識を得るというのは今後は社員教育の一環となってくると思います。
ただ社員全員に一度に、うつ病についての正しい知識を得てもらうというのは無理があるでしょうから、部・課毎にうつ病についてのセミナーに出席してみたり、勉強会を開くといった方法で少しずつでもそういった体制を整えていきましょう。
③就業規則の見直し
うつ病休職者のリハビリ出勤を上手く進める為にというテーマなのに
「どうして、就業規則の見直し?」
と思うかもしれません。恐らく多くの会社の就業規則というのは、普通
「体調や精神面に問題がない状態」
においての勤務のあり方だったり、有給休暇の取り方そして病気や出産といった入院を要する時の休職の仕方という風になっていて、
『うつ病になった時の休職やリハビリ出勤・復職の方法』
というのは特に取り決めはされておらず、就業規則として盛り込んでいる所もまだ少ないといわれています。
そこで今後うつ病を患った社員が出るであろうと仮定して、うつ病になった時やメンタルヘルスケアについての就業規則を加えたり、残業についての就業規則を改正したりすれば、リハビリ出勤やリワークをしやすくなりますし、社員も
「うつ病やメンタルヘルスケアについての就業規則があるから、もしうつ病になったとしても会社がサポートしてくれる」
という安心感を感じられるのでイコール「働きやすさ」にも繋がってくるといえます。
「うつ病やメンタルヘルスケア対策に何をしたらいいか分からない」
とお悩みなら、まずはこの3つから始めてみては如何でしょうか?この3つのポイントを抑えているか、いないかだけでも、会社としてのうつ病やメンタルヘルスケア対策というのは違ってくると思います。