2015年12月1日から、
『職場で年に1回、社員のストレスチェックを義務付ける制度』
がスタートしました。
これは社員の仕事や会社でのストレスの軽重をチェックして、『うつ病』になる可能性がある社員を見つけ、適切なケアや対策をしていこうというものですが、現在のところ対象は
「社員が50人以上いる事業所」
となっています。
しかし、国としては
「2020年には全ての事業所で、社員がストレスチェックやうつ病等の心の病のケアを受けれるように」
という指針を発表しているので、ゆくゆくは
『全ての事業所でストレスチェックやうつ病対策を義務化』
となるでしょう。
そうなると、現在50人以下の事業所であっても「全事業所義務化となる前に準備が必要」といえます。
ただ、いきなり「ストレスチェックの準備を」と言われても、「何をどうしたら、いいんだ?」となるでしょうから、今回は
『ストレスチェックの準備を兼ねた職場環境づくり』
をテーマにして、お話していきたいと思います。
目次
1.ストレスチェックを兼ねて、見直したい3つの職場環境とは?
現在50人以上の事業所が年に一回のストレスチェック実施の対象となっていますが、50人以下であっても、
『ストレスチェックは実施した方がいい』
といえます。
なぜなら、職場が原因でのうつ病というのは仮にうつ病が改善や完治して職場復帰したとしても、環境が以前のままであれば
「うつ病の再発と再度の休職」
という結果を招くからです。こうなってしまうと、せっかく元気に復帰した大切な社員をまた失う事になります。また休職している社員の仕事を周りでカバーしていく形となるので
「うつ病を患う社員を増やしてしまう」
可能性も出てきます。
こういった現象を防ぎつつ、ストレスチェックの前準備となるのが
① 労働時間や仕事量
② 上司と部下の関係
③ うつ病等を患った時の休職・復職ケア
といった
『職場環境の見直し』
です。
この3つを見直す事で「ある社員のストレス度合いが高く、うつ病になる危険性がある」という結果になった時に、なぜそうなったか?という原因を探りやすくなります。原因が探りやすくなれば、その後のうつ病へのケアや対策を考えやすくなります。
更に職場環境を改めて調べてみると、普段は気づかない
- 社員と仕事量のバランスの悪さ
- 上司と部下の意思の食い違い
- うつ病で休職してい社員がスムーズに職場復帰出来る環境か
というのを知れるいい機会となります。
では、次からはこの3つの職場環境のどの点をチェックしたらいいか?について説明していきます。
2.労働時間や仕事量について
「仕事が忙しい」というのはよく聞く言葉ですが、それでも
- 残業時間が多い
- 休日出勤が多い
- 仕事量が本人の力量と合っていない
等の理由は、単に「忙しいから、そうなってしまう」では済まなくなってきますし、うつ病になる可能性は何もしなくても高くなってきます。
「けど、それって本人の責任じゃないの?」
と感じるかもしれませんが、例えば
- 元々はその人の仕事ではないのにやらせている
- 定時時間ぎりぎりに急ぎの仕事を頼んでくる
- 休日出勤する必要がないのに、しないといけないような雰囲気になっている
といった場合、これは本人の責任といえるでしょうか?これらは本人の責任というよりも、
『職場環境によるもの』
といえると思います。
そして会社が原因でのうつ病を発症したの場合、こうした職場環境が引き金となっているケースはとても多いですし、後を絶ちません。だから「ストレスチェックケアをしていこう」と考えたら、まずは労働時間や社員と仕事量のバランスを見直していくのが「はじめの一歩」となるのです。
3.上司と部下の関係について
イマドキの若い社員さんの中には
「報告や連絡を全てメールで済ませる」 「会社の行事に参加しない」
という人が多いそうですが、上司と部下のコミュニケーションが職場で上手く取れていないのは「仕事がスムーズに出来ない」だけでなく、目次1での長時間勤務や仕事量の増加にも繋がります。そして、ここに繋がれば
「心的ストレスが増える→うつ病や抑うつ症状を起こしていく」
ようになります。
上司・部下だけでなく「職場での人間関係」といったのは、会社が原因でうつ病になった時に患者さんからよく聞くケースですが、恐らく
「会社が原因でのうつ病のきっかけNo.1!」
といえるでしょう。
ではそんなきっかけを失くし、ストレスチェックケアとする為には
上司と部下の間での意思疎通』
がカギとなります。
こんな事を言うと、お互いに
「そんな上司と話すなんて。。。」
「部下と何話していいんだか。。。」
となってしまいそうですが、これは何も「仕事の話をしてください」というのではなく、
『世間話をしてください』
という意味での意思疎通です。
仕事の話となると、どうしても部下は言いづらいですし、上司は本人は叱咤激励のつもりでも「叱責」となってしまう事が多いです。そうなると不用意にお互いのストレスを増やしてしまいかねません。
しかし、世間話にはテーマはありません。だから「何を話したらいいんだろう?」となってしまうかもしれませんが、
- 休日の過ごし方
- 趣味
- 最近あった出来事
といったのを話してっているうちに、そこからフッと
「あ、彼にはこんな一面があるんだな」 「A課長は、こんな風に物事を考えるんだな」
というのが垣間見える事があります。
これは仕事の話では感じられない部分ですが、実は
『相手の考え方や物事の捉え方』
というのを知るのにとても役立つのです。
しかし、だからといって、「構えて世間話をする」というのもちょっと本末転倒といえるので、
- お昼休み時間
- タバコ休憩
- 営業の移動中
といった時にしてみると、何気なく自然に出来ると思うので、まずはこの辺りから始めてみると上司と部下という立場であっても、
- 話し合える環境が整う
- 部下のちょっとした変化に気づける
というメリットが出てくるので、それはストレスチェックにも、「部下のうつ病に気づくポイント」にもなるので、とても有効的です。
4.うつ病を患った時の休職・復職ケア
目次2と3は「ストレスチェックケアとうつ病にならない為に」でしたが、ここからは
『うつ病を患った時』
『社員のストレス度合いが高い時』
の職場環境の見直しについて、お話します。
最初にお話したようにストレスチェックは
- 社員の日頃のストレス度合いのチェック
- うつ病等の精神疾患になっている可能性がないか
というのをチェックする為のものですが、
『ストレスチェックを行った時点で、うつ病になっている・かなりのストレスを抱えている』
社員がいるのは、会社で働いている人であれば誰しもが予想できる事といえます。
そして、もしそんな社員がいた時に会社として直ちに行わないといけないのは
① 該当する社員へ、専門機関での治療を促す
② 必要であれば、休職の手続きを行う
③ 復職後のケアプランの作成
です。これらの他にも色々と行う必要がある事はありますが、まず最優先でというのであればこの3つとなります。
そしてこの3つを行う際に、うつ病になった社員もですが
『休職中に仕事をカバーする社員への配慮も必要』
というのを職場の上司や人事・労務を担当している方は理解しておかないといけないですし、この点からみても「職場環境のチェック」は重要です。
また、うつ病で休職していた社員が職場復帰する場合に「いきなりフルタイム勤務で」とするのは、うつ病の再発と再休職のリスクを高くするだけなので、
『慣らし出勤やリハビリ出勤が出来る職場環境になっている』
のも大切です。
「今は、うつ病になってそうな社員はいないし、そんな社員が出た時に準備すればいい」
と思うかもしれませんが、職場環境を整えるというのは
『全員で取り組まないと上手くいきません』
ので、うつ病の社員が出た時に「さぁ、準備しよう」となっても、直ぐには出来ないでしょう。そしてもしそんな状態で、うつ病の社員が休職や職場復帰をすれば
「会社が、うつ病の社員に対するケアを十分に行わなかった」
と裁判に訴える可能性が出てきます。
もし万が一そうなってしまったら、社外の評判や信用が落ちるだけでなく、勤務している社員のやる気も低下するので、会社としては大損害を被る事になるでしょう。
会社が大損害を被ってしまえば、もう職場環境を整えるところではなくなってしまうのではないでしょうか?
『会社にとって大切な社員が、きちんと休職してうつ病治療が出来るようにして、職場復帰を無理なく行えるようにする』
のはストレスチェックの大きな役割であり、これからの会社に必要不可欠になってくるのではないかと思います。
まとめ
先日見た新聞の社説欄に
「2015年12月1日から、会社での年一回のストレスチェックが義務化」
というのが載っていました。
この社説が今回の記事作成のヒントになったのですが、その時感じたのが
「今は50人以上の事業所が対象って事は、50人以下の事業所は何もしなくていいと思っているかもしれない」
です。もしそんな風に思っている方がいたら、今後「全事業所で、ストレスチェックケアが義務化」となった時に、恐らく準備段階でパニックになるのは間違いないでしょう。
会社でストレスチェックを行って、ストレス度が高い、またはうつ病の可能性がある場合にその原因として一番直結してくるのが、仕事や人間関係などを含めた
『職場環境の問題』
となってきます。
だとしたら、従業員が50人以上であっても、50人以下であっても『職場環境の見直し』は直ぐにでも行う必要があるのではないかと思います。